金属冠の作り方

このページでは、メタルコア(金属製の土台)とメタルクラウン(金属冠)の作り方を、写真をお見せしながら解説して行きます。

写真は、根の治療まで終わった時の状態です。歯の崩壊が大きいため、まず、金属の土台を作ります。この土台のことをメタルコアと言います

メタルコアを作るために、歯の型をとり、そこに石こうを流し込んで、石こう模型を作ります。

石こう模型を使って、ワックスでメタルコアになる部分 ( ワックスパターンと言います) を作ります。この作業をワックスアップと言います。

ワックスアップが済んだら、ワックスを模型から取り出し、写真のような状態で、ゴムの台に取り付けます。ワックスの下のほうに金色の物が見えますが、これは、金属製の小さな棒です。

左側の金属製の筒は、鋳造リングと言います。このリングをワックスパターンを立てたゴムの台へ、上の方から押し込みます。そして、その中に埋没材を流し込みます。

埋没材と言うのは、単独ではサラサラした、粉末状の物です。使用する時は、水で練って使います。

初めは、流動性がありますが、時間が経つと流動性がなくなり、最終的には、石こうのように硬くなります ( ただし、石こうのような強度はありません。肉眼ではわかりませんが、わりかしすかすかした多孔質の状態で硬化します。)。

写真は、流し込んだ埋没材が硬化した時のものです。

硬化後、ゴムの台を鋳造リングから外します。埋没材の中には、ワックスで出来たコアが埋まっています。金属の棒は後で引っ張って抜いておきます。

写真の機械は、ファーネスと言います。一種の炉のような物です。先ほどのゴムの台を取った鋳造リングをこの中に入れ、炉の温度をゆっくりと700℃まで上げて行きます。

写真は、鋳造リングを入れて温度を上げている時の状態です。通常、炉のふたは閉じられています。こうして温度を上げることによって、埋没材の中のワックスは、燃えてなくなります。こうしてできた空間に、金属を流し込みます。

写真は金属を流し込む装置です。遠心鋳造機と言います。読んで字のごとく遠心力で、溶かした金属を先ほどの埋没材の中に出来た空間に流し込みます。

左の上の方に鋳造リングが写っています。その手前にに白っぽいものがありますが、その上に金属を置いて、ガスバーナで溶かして行きます。

ガスバーナーで金属を溶かしているところです。写真では、鋳造リングをすでにセットしていますが、溶かす金属の種類によって、それが溶けてから、リングをセットすることもあります。

金属が溶けるのを見計らって、ストッパーを解除します。鋳造機のアームの部分がいきよいよく回転します。そして溶かされた金属は、鋳造リングの方へ投げ込まれます。

二枚上の写真をもう一度見てください。鋳造機のアームの部分は、L字型になっているのがわかると思います。しかしこの部分は、回転と同時に遠心力で一直線になります。

金属を流し終えたところ。

埋没材を取り除いて、金属を取り出したところです。下半分は不必要な部分なので、切り離します。

できあがったメタルコアを石こう模型に入れたところです。先ほどのワックスが、金属に置き換わっているのが、良くわかると思います。

口腔内にメタルコアを装着したところです。セメントと呼ばれるものを使って、コアが歯から取れないように、しっかり固定します。

メタルコアを装着した歯を削って行きます。写真は削り終えたところです。削った歯のことを支台歯 ( しだいし ) と言います。

次に患者さんの歯の型を取ります。

支台歯のあたりを拡大したところです。この部分が一番大切なところです。気泡が入らないように注意して型をとる必要があります。

採った型に石こうを流します。

石こうが固まったら、歯型からはずします。

支台歯を拡大したところです

出来上がった石こう模型を咬合器と呼ぶ器具に装着します。これで患者さんの口の中を模型上に再現するわけです。

口を開けたところ

先ほど模型を3つ作りました。その中の一番小さい模型は、写真のように加工します。使い方は、後ほど説明します。赤色のラインが見えますが、これは歯を削ったところとそうでないところの境界線です。このラインをマージンと呼びます。

ここから歯を作る作業に入って行きます。メタルコアを作った時と同じようにワックスで作って行きます。

溶かしたワックスを少しずつ盛り上げながら歯の形にして行きます。余分な部分は削って取ります。前後の歯や上の歯と調和した形にする必要があります。

ほぼ完成です。次はこのワックスパターンを先ほど作った小さい方の模型に移し変えます

移し変えたところです。咬合器に付けた方の模型では、歯と歯の接触する部分や歯ぐきに近いところが、どうしてもきれいに作れません。そこで小さい模型に移し変えて作って行くわけです。

ワックスパターンの完成です。マージンの部分も小さい模型を使うことで歯型にピッタリ合わせることが出来ます。

次は鋳造です。メタルコアの時と同じなので説明は省きます。

鋳造が終わったところです。

余分な部分をカットして、模型に戻した状態です。

前後の歯との接触する強さや上の歯とのかみ合わせの高さに注意しながら金属を磨いて行きます

模型上での作業は終わりました。後は口の中で合せて行きます。

かみ合わせの悪い患者さんや歯ぎしりのある患者さんの場合、すぐにメタルクラウンを付けてしまわないで、仮のセメント(強度の弱いセメント)でクラウンを付けることもあります。そしてしばらく様子を見て、問題がなければ本当のセメントで付け直すわけです。

写真をよく見るとクラウンの右斜め下の方に小さな突起が付いているのがわかると思います。これは本当のセメントで付けなおす時、この突起を利用して、仮はめのクラウンをはずすわけです。

すべての調整を終えてメタルクラウンを口腔内に装着したところです。小さな突起も削り取っています。

以上でメタルクラウンの治療は終了です。